Jazz&audio
          第6回

   
CDトランスのケースを作る
 
吉田昌弘

CDトランスの試聴会では昇圧比の低いモノであれば簡単に流用出来る事が確認出来、その後多くの友人が色々と試み楽しんでいる報告を頂きました。
当日は現物の無かったWE-111CとOPTを流用したタムラHM-1に話題が集中し、そんな事情もあってWE-111Cを入手しました。
そこで試聴の報告とその後の顛末を記します。

ウエスターンのマニアの間ではWE-111Cでも製作年代の古いモノを珍重するようですが、私が入手したモノは70年代製です。
早速私の常用機種タムラHM-1と比較してみました。
第一印象はレンジもさほど広くはなく、音にまとまりが今一つ足りないと好印象は得られませんでした。
WE-111Cは2ミリ厚の鉄板をプレスした堅牢なケースにパーマロイ・リング・コアを収めており、これをそのまま並べるとこの様に端子が上に成り、むき出しの状態でイケマセン、さりとて大きな箱に入れるのは好みでは有りません。
そこでケースをつくることにしました。

WE-111Cの端子隠す為に逆さまにして、これをどの様に格好良く固定するかを一番思案しました結果
タムラHM-1と同じような木製のシャシーとする事に決めました。
ついでにタムラの方も新規に作り直し、現在の固定抵抗のATTからロータリー式ATTに付け替え幅広く使えるトランスを考えました。2機は前作タムラHM-1とほぼ同じ大きさに揃えた仕上がりを想定して進めていきます。木材の選定に当たりニス仕上げが美しくなり耐久性が有る事から、前作は檜を使いましたが今回は松の集成材を使います。

WE-111CとタムラHM-1のトランス本体を比較しますと、背の高さではWEの方がおよそ集成材一枚の厚さ分2p程高いのです。
そこでWE-111C用には一枚目の板をトランスの小判型の大きさにくり抜き、二枚目の板はそれより5ミリ程小さな穴としトランスを受け止める形を考えました。
二枚の板を張り合わせ一つのブロックとします、そこにトランスやネジ端子などを貫通させましので、それら中心点はそれぞれ同じ位置に来ます。その事を計算して木材に鉛筆でケガキをし、切り出します。

入力はバランスにCANONアンバランスにRCA端子を使います。RCAは組み付けのしやすさからトリテック製を選びました。こうして出来上がったブロックの背面に端子の穴を開けます。
小判型の穴にWE-111C差し込んでみますと少しきつい感触がありますので、くり小刀、紙ヤスリなどで修正します。
トランスをはめ込んで逆さまにしても外れないほどピッタリとはまっており、2個のトランスの間に5ミリ・ステンレス・貫通ボツトでアダプターを使いトランスを上からシャシーへ向けて締め付けます、これで外れる事は有りません。
トランスの前・上面にRCA端子をもうけそれを出力としますので、RCA端子に五円玉大のワッシャーを作りナットで締め付けて2ミリネジで取り付けます。ここは小さく収まる様にしなければ形のバランスがとれ無いと云うのが私のこだわりでも有ります。

タムラHM-1のリメイクですが仕上がり寸法、形の基本は今までのモノと同じで、違うのはステップ式ATTを入れる事です。
この部品は外形が大き過ぎるので工夫をしなければおさまりません。
そこで最近腕を上げて来た工作の技を駆使して、木のシャシーにATTのメス形をくり抜き収める方法を考えました。
二枚の集成材を張り合わせてシャシーとする為、一枚目にはATTの外径分の穴をホールソーで切り落とし、二枚は途中までをホールソーで開け残りをノミでATT上面の形に削り出します。
入力端子は今までどうり背面にバランスとアンバランスの2系統を設けます。トランスは2ミリ厚真鍮板に取り付けます。真鍮板には#400耐水ペーパーでヤスリの目を入れラッカースプレーで仕上げ、 出力端子はこの真鍮板に取り付けます。

こうして切り出したシャシー・ブロック木地の形を鉋で整えます。
今回はイギリス・ワトコ製のオイルで着色しました。次にウレタン・ニスを塗り、乾燥したら耐水ペーパーで研ぎ出します、それを5回程繰り返します。その時ペーパーも#400〜#1000と目を細かくしていきます。
WEのトランスに対してWEのコードで配線するのがマニアの間では流行っています、私はあえてWE,タムラ共にBELDENのAWG#20を使いました。
WE-111Cの端子には半田が乗り難いのでヤスリで細かいキズを付けてから作業に取りかかった方がやり易いです。

こうして完成した2機を並べて眺めて見ますと、今回の日曜大工は成功でした。WEはトランスの中身がリング・コアである事を感じさせる外観に仕上がり気に入っています。
さて肝心の音ですがたいしてを期待していませんでしたが、WE-111Cに大きな変化が見られ驚きました。
「木でトランスの一部を固定する事で振動が制御された」などと最もらしい理屈を述べるつもりはありません。 半田付けをきちんと行った事と、結線を一部変えた事、今まで寝ていたモノを起こしエージングされた事が原因かもしれません、ともかく今までバラバラだった音がちゃんと出る様になりボーカルの口元も自然に感じられる様になりました。
一方タムラにはステップ式ATTを挿入した事でこれからも実験用として便利に使えます。

<このページのトップへ戻る>