Jazz&audio 第7回
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吸着糸ドライブプレイヤー新調の記 |
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吉田昌弘
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JAZZ映画館としては四半世紀ぶりにLPプレイヤーを新調しました。
長年愛用して来た電音RP-53、モノーラル再生時は全く問題は無いのですがステレオ再生時にモーターのノイズ(ゴロ)が気になりだしていました。
その解決方法として、電源オン・スタート後10秒で電圧を70vに落とす様に、リレーを使った回路を入れています。
その頃友人の購入したEMT-927を聞かせて頂き外観の美しさと、アイドラー・ドライブでもノイズの静かなステレオ再生が可能だと知り圧倒されてしまいました。
そこでゴロの全く無いステレオ・プレイヤーを作ろうと云う考えに至りました。
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友人宅のEMT-927st
EMT997アーム+TSD-15→EMT・EQ
ortofonRF297+SPU-Aを追加→WE・EQ
30センチLPを載せた状態
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<設計・設置場所>
LPプレイヤー増設を現実の問題として考え、カウンターの内側電音RP-53の右隣に設置する事に決めました。
ダミーを置いてみるとEMT-927は大き過ぎてカウンターの中で動きが取れない、これでは本来の業務に支障を来します。
電音RP-53は1950年代モノーラル全盛の時代にNHKと電音の共同開発で物量を惜しみなく投入して作られ、基本的にはEMT-927に近い設計思想で、フレーム、軸受け、モータなどの機械部分の造りはさすがと唸らせるモノがあります。しかしアイドラー廻り、モーター等の防震対策ではEMTに一歩譲ります。
そこで現実的な候補としてEMT-930を考えましたが、樹脂制のフレームはどうしても好きになれませんでしたので断念する事にしました。
他にタイプは全く異なるがメルコかマイクロの砲金製糸ドライブ・プレイヤーはどうだろうか?と考えは揺れます。
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<購入>
これらは現在製造中止の為中古品をオーディオ雑誌の売り買い覧、国内外のネットオークション等を手がかりに探しました。最近はターンテーブルをプラッター等と呼び、重厚長大なプレイヤーは流行から外れ以外と少ないです。
その過程でステンレス・ターンテーブルのみで重量35kgに極太の軸受けと云う代物なども見かけました。
数ヶ月を経てどうにかメルコとマイクロの売りの連絡が入りました。
「音の厚みと静けさ・外観の美しさ」がテーマなので新品に近いマイクロの糸ドライブ・砲金吸着式ターンテーブル一式を購入しました。
さて、これを素材にして私のステレオ・プレイヤー原機と言えるモノを作ってやろうというのが今回の制作です。
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<設置場所と置き台>
現在オーディオ機器を設置している場所と厨房を壁で仕切っています。
壁の右・厨房側に設置場所となる置き台を造ります。
そこは カウンターの内側で、保健所はイヤナ顔をしますが仕方有りません。
これの柱を残して、壁面をくり抜き、その2本の柱を底辺とした直角三角形を形成する位置に支柱を立てます。
その3点を支柱とした直角三角形で完全な水平となる点を選びます。
置き台の素材は35ミリ厚の檜ムク板を切り出しました。
檜はさすがにスバラシイ木材で、その堅さは木ねじが折れてしまう程ですが、堅木の特徴である割れやすい等は皆無で粘りがあり、仕上がり状態が美しい素材です。
この置き台の中央、丁度軸受けの真下に50ミリ程の穴を開けます。
軸受けには吸排気の穴があり、そこにホースを連結するからでこの穴にポンプへのゴード、ホースをまとめて通します。
この位置にする事で後々の保守点検の作業がやりやすくなります。
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<マイクロ吸着プレイヤー・システム>
モーター部、ターンテーブル部、吸着ポンプ部の3つのブロックから構成されて居ります。
吸着の原理はターンテーブルの30pLP音溝が来る部分の外側と内側の位置に空気を遮断するシリコンゴムの弁が固定されていて、弁と弁の内側の空気を吸引します。
その結果30pLPは大気の圧力でターンテーブルに張り付けられ一体化します。
具体的な動作はターンテーブルに開けられた小さな空気穴が軸受けの底の部分へ通じる空気穴に繋がって居り、
軸受けの底の空気穴をゴムホースでポンプに連結させ吸気と排気の切り替えを行います。
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<モーター・ユニット>
最近のプレイヤーでは小型のサーボモーターが主流に成っていますが、私は保守のしやすさトルクの強さからシンクロナスモーターにこだわります。
マイクロのオリジナルはモーターに鋳鉄製のリングを重りとして抱かせスチールケースに収めただけで、外観は色気の無い貧弱なモノでした。
そこでをオリジナルケースは破棄し本体との一体感を考え、堅い木材を選び積み重ねてモター・ケースを造ります。
肝心のモーターは3ミリの銅板を切り出しこれを介してモーターと重りリングを取り付け、このリングをケースへ固定させます。モーターは空中に浮いた状態にあります。
進層コンデンサーにはWE仕様のサンガモを使いました。
モーターの上下軸受けから給油のビニールパイプが出ていますが、それはケース内で折り曲げられ、固定され独立した注入口が有りません。そこでパイプ状のラグ端子が注入口として丁度良いサイズでしたのでラグ板を切りだしモーター近くにアルミ板で固定しました。
ケースの手前部分にモーター及びポンプの電源スイッチと吸排気コントロールの操作部をまとめます。
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<コントロール部>
モーター・ユニット・ブロックの手前1/3にコントロールを集めました。
上の左側がターンテーブル駆動用モーターのスイッチです。
右側がポンプ・ユニットのリモート・スイッチです。
電源のトルグスイッチにはWE使用のアンティークな鈍色のモノを選びました。
このポンプ・ユニットには電源スイッチが付いておりますが、これは常時オンの状態にして、コントロール部のリモート・スイッチでオン・オフを行います。
中央やや左よりのパイロット・ランプ点灯時に ポンプ・ユニットがオンの状態を示します。
その下のロータリースイッチのノブでポンプの吸気と排気を選択します。
この写真の状態は排気で、吸気は左へ90度パイロット・ランプ の位置まで回転させます。
ターンテーブル本体の塗装をハンマートーン・グレイとしますので、
コントロール・パネルも同じ塗料を塗る事にました。
これでモータ・ブロックの完成です。
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<アーム>
アームはオーディオ仲間であった加藤氏から生前に「形見として使ってください」と頂いたSME-3012Rを使います。氏は当HP・SOMETHIN`ELSE-1にもエッセイを書いてくださいました。
マイクロの純正のアームベースは黒の艶消し塗装されていました。これを剥がし真鍮の地金をやや研磨しクリヤーを吹き付けました。
これは設置時奥まった位置に来るため 派手目のデザインの方が木部やターンテーブルと色のバランスが取れると考えました。
設置場所からアームホルダーも奥まった場所になり使用にさいしやや不便を強いられます。そこで使用時に便利な様に紫檀を削り出して造りました。
このホルダーの左端にアームをスライドさせながら降ろすと丁度LPの頭の無音溝に入る様に調整してあります。
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当店で使用しているプリアンプはAccuphseC-280とmarantz-7で、
どちらもphono入力は2回路です。
今まではStereoとMonoに振り分けていましたが、プレイヤーを増設することで入力ソースが3回路以上に増えましす。
そこでプリアンプのphono入力1-2をプレイヤー1-2とする使い方も考えられますが、今回はphono-1をStereoに、phono-2をMonoとしました。
Stereoでは入力4Ωと40Ωのトランスを介しており、たまたまこのトランスには入力切り替えスイッチがなく入力端子の部分で差し替える方式です。
アイドラー・ドライブの電音PR-52ではDENON-103、EMT TSD-25等の40Ω端子へ入れるMCカートリッジを使い、増設の糸ドライブ・ターンテーブルではFR-7とOrtofonSPUを使いますので4Ωへ入力する事にします。
そくで入力1→出力1、入力2→-出力2を選択するスイッチを作ります。
たまたま手元に6mm厚のアルミ板にSWを固定し外枠は無垢の木で作ります。
内部配線は純銀線とアクロテックの6N・AWG-20を使いました。
トランスへのケーブルは40Ωはアクロテック・6Nのシールド線を、4Ωは6N撚り線でHiとLoに使い分けます。
コネクターはアクロテック6Nが手持ちに有りましたのでこれを使い作りましたました。このコネクターではホット側に6N丸棒、コールド側に6N薄板を使い価格も高いだけにに良く出来ています。しかし組み立てには小さなプラスネジを使うのが面倒です。
その為にスイス・PB製の00番・精密ドライバーを購入しました。 |
<ポンプ・ユニットの設置>
吸着用ポンプユニットMK-91Vは本体に並べて配置する事を想定しているようです。
黒い大きなケースを開けると防音のスポンジに包まれた小振りの真空ポンプが入っています。
私はスペースの関係もありますが、本体の真下仕切の壁に穴を開け、ここへ垂直に立ててコンパクトに収めました。
ポンプに付けられているスイッチはオンの状態にしておきモーター部のスイッチで操作します。
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<本体>
購入されてからほとんど使用していないと云うだけに、傷も無く綺麗です。
シャシー内部には重量増強の為のマイクロ純正ウエイトが付いておりました。
しかし私はこれを完成品ではなくパーツとして考えて居りましたので、せめて色だけでも変え様とグレーのハンマートーンで塗装しました。
置き台に木製モーター部と並べて試運転を行います。
設置場所が出入り口の為に、モーター部に腰が当たり押されて動き糸が弛んでしまうしまう事故がありました。
そこで本体部にモーター部と同じ木材でスカートを作りモーター部分も固定します、これで大きなずれ動きを止めます。
<試運転・試聴>
JAZZ喫茶で糸ドライブの吸着ターンテーブルを使っている店はまずありません。
モーターを作動させるだけではなく吸排気のコントロールも必要になり、2つの動作を行いますのでアルバイトの皿回しにお願い出来る事ではありません。
オルトフォンSPUにて試聴を行いました。
糸ドライブは立ち上がりが遅いのではないかと心配でしたが、実用上は問題ありません。
砲金ターンテーブルはそれなりの重量が有り慣性モーメントも大きく、それに対し糸はトルクの伝達が悪くその事がかえって回転を安定させてくれます。
モーターとターンテーブル部を物理的に切り離しておりますので、モーターのゴロが聞こえると云うことは当然ありません。
吸着のアリとナシを聞き比べました。吸着でLPを砲金ターンテーブルに張り付た場合、低域はクリアーに、高域のアタックが強く艶が増しました。この効果は絶大です。
結論としては大成功だと自負しております。
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<マイクロ純正外周スタピライザー発見>
ネットのオーディオ関連を何気なく見ていた時です。
マイクロ純正外周スタピライザーなる土星のリングの様なモノを見つけました。
今までカタログでも見た事が無く存在さえ知りませんでした。
早速オークションに入札、しかし後一歩のところ惜しくもで逃してしまいましたが、数日後、同じ人がオークションに再度出品していたので無事落札。
さすがに純正部品で、仕上がりの色合いもターンテーブルと同じで満足。
リングの羽目具合はやや緩く、銅箔テープとテフロン・テープを貼りピッタリと合わせます。
このリングを取り付けると、立ち上がり時間が今まで4秒だったのが6秒かかります。つまり機械的慣性モーメントが大きく成った訳です。
30センチLPをセットした時ターンテーブル側には6センチの余裕があり、またアヴァンギャルドな視覚的印象が私を満足させてくれます。 |
コントロール・パネル は塗装前です
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<追記・スピード調整>
このマイクロ製の場合モーター・プーリーが規定より少し太めに仕上げて居り、ターンテーブルの回転数は気持ち早いです。
また使用する糸の太さでも回転数は変わります。
糸が太い場合はやや早い方向へ流れ、糸を細くしますと遅くなります。
また回転数が早い場合はターンテーブルにテンションを掛けるなど調整する事は可能ですが、遅くなってしまった回転を早い方向へ調整する事は出来ません。
私の場合ほんのわずか早めに設定しました。
プーリーの調整は糸掛け部分を耐水ペーパー#600で少し削り、荷造り用紙ひもにピカールを染みこませたもので研磨しました。
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