第3回 バクダン池 絵:黒田征太郎
詩:西野智昭
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狙いをはずれて
畑にうがたれた
爆撃の
みごとに円い
水たまりが
バクダン池

いつだったか
ザリを獲りに
ペラペラのビーサンで
夏空を威嚇する
葦にわけ入り
踏み込む
泥へ
途端
ざっくりと
切られた
踝が
目を醒ます
きっかけは
なにか
瓶のカケラ

大怪我の悪寒は
米軍の戦略から
ズレること三十年
耳鳴りで
ひとり涼しく
泥まみれ
白い肉
裂け目から
食用ガエル
鈍重な跳躍
だくだくと
血がこぼれて
太陽を
かすめる鳥影
友だちが
逃げていく
遠くに蝉
鼻先に
ヤゴの抜殻
蘇生をうながす
ヘドロの腐臭に
包まれていた

血と
ガラスごと
池は埋め立て
野球のグラウンドになって
凧も飛ばした
チョコもらいそこねた
あげく
警察署が建った
池があった
怪我をした
近所の
工場地帯をはずした
爆弾
下手とはいえ
戦果なしでもなく
しっかり切った
踝を
三十年後の
コドモに
爆撃手
通った空は
見上げた空
果ては
アメリカへ

 
 
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