第4回   
スイーリル 西野 智昭
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あたしだって
あんたみたいなブスでも
恋くらいするのは
知ってるわよ
そうよ
あたしだって
恋はするのよ

     

だけどね
あたしは
会ったこともないタレントになんか恋はしないし
ガッコーの男子だって好きになったりしない

じゃなくて
好きになることはあっても
つきあいたいなんて
思わないってことよ


だって
おかしいじゃん
映画みたいに
キレイな女とカッコイイ男が
恋をするんならともかく
どうやって
あたしらみたいのが
恋をするのよ

じゃなくて
あたしらだって
恋をしなくちゃなんないんだから
ジンセーサイアクってことよ

だから、だから
あたしらはまず
何者かにならなくちゃならないのよ

そんなこと
自分で考えなさいよ
それとも
あんたの頭に巣喰ってる
へんな虫にでも訊いてみればいいじゃん

あたしに言わせれば
すっごい美人ならともかく
そこらにいるただの美人なんて
いくらちやほやされたって
せいぜい十年くらいなもんでしょ

あたしらはべつに
日本にちょびっとしかいない
カッコよくて、金持ちな男に
媚売ったりする必要ないじゃん

カッコとかお金じゃなくて
スゲー男って
スゲーって思うでしょ、やっぱ

とにかく、あたしらは
何者かにならなくちゃ
何も始まらないって
言ってるのよ

美人になりたいなんて言わないでよ
おとぎの国じゃないんだからさ
魔法のランプなんかないよ、ゲンジツは
お願いを三つに絞ってるヤツっているけどさ

そんなにしょげないでよ
あたしら
これからなんにでもなれるんだよ
アリとキリギリスの話って知ってるでしょ

冬の日にさ
ボロボロになった美人が
あたしんちに訪ねてくるわけ
とりあえず紅茶なんか出すじゃない
とうぜん、美人のバイオリンに目がいくのね
そんであたしは
「いいな〜、楽器が弾けて…。
あたしって、そういうの、ぜんっぜんダメなんだ〜」
とか言っちゃってさ
一曲弾いてもらうの
落ちぶれた美人のバイオリンを聴きながら
あたしは
うっとりと紅茶をすするのよ

どんな味がすると思う?
知るわけないじゃん
飲んだことないんだから
フフ

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