親父がこれからは「デジタル時代だ」
と言って俺の両肩を叩くから
俺なりに噛み砕いた結果
「デジタル刺青」を取り入れることにした
「ガマン」の領域を超えて「オペ」やったけれど
背中に14インチの液晶画面をはめ込む事によって
既存の刺青の問題点であるところの
「やり直しが効かない」という点を克服
現状「昇り龍」というソフトをインストールしているが
チップの交換をするだけで
「金太郎物語」「情事・マリア観音」
「呪怨」「ビバ台湾・ようこそ故宮博物館」
などを動画で楽しむ事ができる
が、親父は結局保守的で
背中見せたら怒り狂って殺されそうになったけれど
姐さんが間に入ってくれたんでなんとか小指二本と
画面の上の保護フィルムを剥がさせてあげることで
許してもらった
だが、親父にしてみりゃ俺はもう終わっちゃったみたいで
シモノモンも俺の事を陰で「ゲームボーイ」呼ばわりしてるのも知っている
来年のFA権取得を見越して
ワールドワイドなヤクザになろうと決意した俺は
駅前の英会話学校に通いつつ
日本の親分クラスをバンバン撃ちまくっていたら
ついにニューヨークギャングのボスからオファーが来た
ニューヨークに渡って俺は初めて転校生の気持が分かった
黒人のガキ、いちいち俺の発音、真似しやがって
誰が「ニンテンドー」じゃ、コラ
ヒップホップなんか誰が聞くか!
本物の音楽っていうのはなあ
「はっぴいえんど」なんじゃ
という摩天楼の衣擦れで歩道をひたすソウルで
「かーぜぇをーあつーめてぇ♪」
と鼻歌まじりにバンバン撃ちまくっていたら
まわりも少し認めてくれたみたいで
皆から「ハッピーエンド」と呼ばれるようになった
最近は俺の発音もだいぶ向上し
ボスもたまに「はっぴいえんど」を聴いたりしてます
姐さん、あなたに教わったあの曲は
ニューヨークの四角い青空を
少しずつ、やわらかくしています
青空を
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