第6回

安田倫子
うつつ
 
重ならない二枚の紙
ひら ひら と
南からふく 風 と
東 からふく風 と
その真ん中に立ち
ゆれるカミに透けて見える
光と
カミのむこうに見え隠れする
景色と
ちらちらと
ただ立ち尽くし
挟まれてもいない
自分と
重ならない
カミと
一緒に
風の匂いをかごうと
目をつぶる

(いつかこの真ん中の
 なだらかに反った道を
 そしらぬ顔で
 歩いていくだろう)

重なることのない二枚の紙と
北 へふく風 と
西へふく 風と
別々に
今はただ
ぼんやりと

 

<このページのトップへ戻る>