リレーエッセイ・猫 第2回 |
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「猫のお仕事」 | |||||
むなかた ひろこ | |||||
私が好んで行く店は偶然なのだが、猫がいる店が多い。店内にはいなくても店主が家で飼っていたり、野良猫に餌をあげているご主人がいたりする。「いい雰囲気の店だなぁ。」なんて思っていると猫がふらっと入って来たりするのだ。以前住んでいた家の近所には結構評判の良い寿司屋があるのだが戸口を常連客のように猫がのれんをくぐるのを目撃したことがある。 |
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学生時代からお世話になっているこの『JAZZ喫茶 映画館』にも何故か多くの猫が訪れる。訪れるというより通い詰めるという方が良いかもしれない。現在通ってくる雄の猫は前回のコラムにあったようにマスターやママさんからは「オイ」と呼ばれている。常連客達はめいめいの名前で呼んでいて私は「アイラ」と呼んでいる。由来はここがJAZZ喫茶のためサックス奏者の『アルバート・アイラー』のアイラと、『アイラ・ウイスキー』で有名なスコットランドのランドの『アイラ島』から取った。
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かつてスコッチの醸造所では、ウイスキーの原料となる大麦をネズミや鳥の被害から守る『ウイスキーキャット』と呼ばれる猫達を飼っていた。彼・彼女らは愛玩動物としてではなくれっきとした職業猫として飼われていたのだ。有名な猫としては約24年の生涯で(寿命だけでもかなりなものだ。)28,899匹のネズミを捕獲したとしてギネスブックに載った『グレンタレット醸造所』の『タウザー』がいる。
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残念ながら現在では法律により禁止され職業としての『ウイスキーキャット』 は存在せず、『初代タウザー』も亡くなってしまったが、書籍等に掲載されて
いる『初代タウザー』は、凛としていて惚れ惚れしてしまう。猫たるものこう でなくちゃ。
我が家で尻にウンチをつけてボケーとしている猫どもに見せて やりたいものである。(我が家の猫達も言いたいことは沢山あろうが。) かつての『ウイスキーキャット』とまでは行かなくても店猫たちはれっきと した職業人(猫)だ。まず愛想がいい。うるさく鳴いたりしない。タバコや 酒飲みを嫌がらない。 招き猫としての役割を理解しているかのように見えるのだ。そして大音量の 音楽を嫌がらない。 |
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特に「『映画館』のアイラ」はJAZZ喫茶に通うだけあって、さすがスピーカーの近くの一番音が良く聞こえるポジションに陣取っている。猫なのにJAZZ好き?なんだかかっこいい。どうやら最近彼女もできたらしい。人間だったら私も惚れる!そんなわけで、私は尊敬を込めて「アイラ」と呼んでいるのだが、当の本人にとってはどうでもよいことであるようだ。今日も定位置で寝転び腹を出しながらご機嫌でレコードを聞いている。
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