SOMETHIN`ELSE 第5回 |
|||||
エッセイ 「NY・JAZZ一人旅」 |
|||||
Mito del Sueno |
|||||
わたしがNYにはまり始めたのはいつのころだろう。 カナダのトロントに留学していたころ直行便がなくてNY経由で、冬は日暮れも早く、乗り継ぎ便のトロント行きに乗った時にはすでに真っ暗、空から本当にものすごい光の渦と浮き上がるマンハッタンが目に飛び込んできた。座席から眼下を見下ろし遠のいていくその光をずっと目で追い、この夜景を見るためだけにもう一度来たいと心底思った。
|
|||||
|
|||||
|
昼間のNYで楽しいのはCentral Parkだ。よく、本を持ってウォーキングシューズをはき、59TH
Streetの入り口から入り、後は110th streetまで歩き回るが途中にいろんなものが見える。まっすぐ行けば3時間くらいの距離だがいろいろと立ち寄るものだから、その倍くらいはかかる。Strawberry
Fieldsも通り、Metropolitan MuseumやMuseum of Natural History、The Cloistersを通り過ぎ、いろいろなレストランも中にあるし、森の中には野生動物もいる。
110thまで行けばそこもうはハーレムの入り口だが、疲れたらプレッエルを買ったり、飲み物を買って、その辺の芝生に寝転がり気がすむまで本を読んでぼーっとする。
大学生やらカップルやらみんな思い思いの格好でリラックスしているし、他人がどんなことをしていてもじっと見られることはないので気持ちがいい。犬好き猫好きの私としては岩場に陣取り、下を見てそこを通る動物たちを見るのも楽しい。さすがNY というやたらにゴージャスな洋服をしているのもいれば、めちゃくちゃ親近感を持つ風貌のただ人が良いと言うか猫が良いという顔のやつもいる。アメリカに住んでいるくせに言語を超えて仲良くなったとき、おお、心が通じたじゃん、なんて思ったりする。 また歩くとそこはそれぞれのミュージッシャンの練習場だったりもする。駆け出しの人もいればそれなりに出演している人もいる。そこで腕を磨いて将来はビックステージでと考えているのだろう。 |
||||
NYは冷たい。実力がなければ人は立ち止まらない。お金も投げ入れてくれない。山ほどいるからだ。同じサックスのストリートミュージッシャンが並んでいるのに片方は腕を組んで聞き入っている人がいてその周りには人が群がっているが、片方にはだれもいない、お金を入れる箱代わりになっているケースにはわずかにペニーやクウォーターが入っているのみの人もいる。他人事ながら厳しいよな、と思う。電車の中でも演奏は行われる。駅から駅のたかだか2分くらいの中、突然彼らはやってきてちょうど次の駅に着くまでに終わる程度のアレンジで曲をひく。これがなかなかなんですよね。メキシカンだったり、アカペラだったり、サックスだったり、ペットだったり、バイオリンだったり、もうありとあらゆるものが演奏される。もちろん演奏が終わっても1セントもくれない人がほとんど。ここでも厳しい。それでも思わず拍手してしまいたくなるほどうまい人もいてそういう人には人々はポケットからあるだけの小銭を出してバサッと帽子の中や袋に入れてやる。生活のためにやっている人もいれば将来を夢見てやっている人もいるだろうが、それぞれが真剣である。だけど、ちゃんと2分以内に曲をまとめて演奏するって言うだけでもすごいと思うんですが。
|
RALPH U. WILLIAMS |
||||
2001.09.11、NYはテロにあり様相がすっかり変わってしまった。 |
|||||
もともとミュージカルやクラシックが好きだったのでとりあえず、はまったのが劇場めぐり。皆さんがご存知であろうTIKETSという半額チケットを取り扱っている店を皮切りに一日をスタートする。そのとき半額で出ているミュージカルの中で面白そうなものを見る。特にこだわりはない。みてみなくちゃわからないから。そして、見てみて面白かったら今度は高くてもいいからよい席を獲得する。英語ということもあり一本につき何回かは見る。わかるまで見る。ブロードウェイ、オフブロードウェイ、オフオフブロードウェイ、それぞれの作品を見て回る。ものすごい本数で、その上毎年新しいものが出るので、見切れるものではない。だから毎年行くんだろうが。
ジュリアーノ政権下、安全性も確立しだしたころ、行動範囲も広くなり、JAZZ Barにも足を踏み入れだした。その、プレイヤーとの近さ、音の鋭さに感動し、また一つ行く場所が増えた。ブルーノートではChick Coreaに会い、気さくにもたわいもない話を話してくれ、一生懸命漢字で私の名前をサインに加えてくれた。 |
|||||
この間 は Birdlandにいって、ここを拠点に活動していたToshiko Akiyoshiさんにあったが、演奏の合間、ちょっと雑談をし DM にサインを頂き毎週月曜日はここに出ているからまたいらっしゃいと言われた。そして昨年12月、ビックバンドの最後だと聞き行った。
レコードを差し出し、サインをお願いすると、“また、よくこんなものを”言いつつ、差し出されたレコードにだんな様のLew Tabackinと一緒にサインをしてくれた。特別なんだけど、どこか普通な、この距離の近さが私をJAZZに近づけ、益々好きになるきっかけをくれた。これからはまたどこかでビックバンドではない違う形で彼女の演奏が聴けるに違いない。 |
|||||
NYにはVillage Vanguard、Blue Note、Birdland, のほかにも小さなJAZZ Barがたくさんあるし、突然、飛び込むのはやっぱりどきどきするが、一度入ってしまえば面白い。ちゃんと気を張ってないと危ないけどね。ぼーっとすると、何でも起こりえるのがNY。どんなに慣れたと思ってても身の回りのものケアや自分の身を守り気は許さないのが鉄則、自分の身を守るのは自己責任。だけど、それを守っている間は楽しむことができる。 “お、また来たな!”なんていわれるとへへへぇと自然と笑顔になる。しかもバーテンダーに"How
would you like tonight?と言われたとき、ついに私も常連か?と淡い喜びを与えてくれるのである。
|
|||||
|
|||||
<このページのトップへ戻る> | |||||